神近香織理嬢聖誕祭記念!?
ある日の1コマ・その29
神近香織理嬢聖誕祭記念!?
※2人のエルダーのネタバレ的な内容を含んでおりますので、読まれる際はご注意下さい。
「ふぅ…さすがに暑いわね…。やっぱり来る時期を間違えたかしら…」
夏休みも半ばほどが過ぎ、暦の上では秋。
しかし、照りつける日差しは、夏真っ盛り。
「なんとなく京都へ来てみたは良いけど…この暑さは想像以上だったわ…。コレだったら、寮にいて、夏風邪を引いた薫子を千早と一緒に弄っていた方が楽しかったかしら…」
昨日、千早から薫子が熱を出したという連絡があった。
寮を出るときまで、薫子が起きてこなかったのは、熱のせいだったのか…。
私が出かけてしまったから、寮には薫子一人だけ。
千早が寮に来てくれて、薫子の看病をしてくれていなければ、いまごろ、起きてこなかった薫子の様子を確認せずに出てしまった事への罪悪感に苛まれていたかもしれない。
いや…それとも、この猛暑は、苦しんでいた薫子を置いて出かけた自分への罰なのかも。
「ふふっ。なら、この罰は甘んじて受けないといけないわね…」
でも、せっかく京都まで来たのだから、楽しまないと。
それこそ、苦しんでいた薫子へ、ささやかな土産話を持って帰らないと…。
「ふふっ。『あたしが苦しんでいた時に、香織理さんは、観光を楽しんでたんだもんね~。ふんっだ!』なんて言うのかしらね。薫子は…♪」
寮に帰った時の、親友…というか、かわいい妹のような大切な友人の姿を想像して、楽しんでいると…。
「あら?これは…」
ふと、小物屋の店先に並んでいたぬいぐるみが目に入った。
「これは…スイカ?なんで京都にスイカのぬいぐるみ…」
「おや?お嬢さん。それが気に入ったのかい?」
「いえ、そういうわけではないのですが…」
そのスイカのぬいぐるみを手にとって眺めていたら、小物屋の主人であろうか、初老の男性が声をかけてきた。
「そうかい?まあ、そのぬいぐるみは、今はちょっと売れないのでね。もし、気に入って売ってくれと言われたら、どうしようかと思っていたんだ」
「え?売れないって…これは売り物ではないのですか?」
見た限り、正直、アンティークとか希少価値があるから売れないというものには見えない。
かといって、なにか傷があるとか、そういった意味で売り物にならない状態というわけでもない。
「いや、売り物ではあるんだが、コレは2つで1組のものでね。なんの手違いか、片方だけ届いたものだから、もう片方を送ってもらっている所なんだ」
「あっ…そうですか…」
なんだ…。答えを聞いてみたら大した事なかった。
「しかし、このスイカの状況は、知り合いに聞いた話に似ているのかもなぁ…」
「は?」
突然、なにを言うんだろう?
「君は『すいかの名産地』という歌を知っているかい?」
「えっ?はい。聞いたことはありますが…」
確か…
ともだちができた すいかの名産地
なかよしこよし すいかの名産地
すいかの名産地 すてきなところよ
きれいなあの娘(こ)の晴れ姿 すいかの名産地
五月のある日 すいかの名産地
結婚式をあげよう すいかの名産地
すいかの名産地 すてきなところよ
きれいなあの娘の晴れ姿 すいかの名産地
という歌だったはず。三番もあるのだが、良く覚えていない。
「うん。あの歌の歌詞には別の意味があるというんだ」
「別の意味?」
「そう…とある三人…いやスイカだから、三玉か。とある三玉のスイカにおける壮大なストーリが隠されているというんだ」
「!?」
「ともだちができた。なかよしこよし。そんなスイカたちだったが、そのうちの一玉が旅に出る。スイカの名産地という名の武闘会にね。しかし、そんな一玉を待っていた残されたスイカのうちの一玉が…。それは綺麗な晴れ姿だったそうだ…」
「………」
「五月のある日。武闘会から戻ってきた一玉は、その状況を知り、怒りに震える。借りを返してやると。そして借りを返したら…。残っていたもう一玉と結婚しようと約束するのだった」
「………」
いまの話…以前、学院の先輩から聞いた『スイカ達の悲哀の物語、スイカ劇場第三話「復習のスイカ、消えたあの子はプリンセス」編』にそっくりだ…。
「いや…なんだろうね…。突然、変な話をしてすまなかったね。なにか君とこのぬいぐるみを見ていたら、急に昔の事を思い出したものでね…」
「いえ…」
そういえば、その話を聞いたときに、なぜ「復讐」ではなく「復習」なのか?と聞いたことも覚えている。
先輩曰く「遥か昔から学院に伝わる話なので、なにか深い理由があるのかもしれない」との事で、はっきり分からなかったのだったが。
そう…遥か昔から学院に伝わる話…。
「小父さま。もしかして…」
「うん?」
その話をしてくれた方は、私の先輩。それこそ何代も前の卒業生なのかもしれません…。
しかし、なぜか私は、それをいうことが出来なかった。
そのかわりに…
「いえ。そのスイカのぬいぐるみ。2つ揃ったらいただけないでしょうか?」
・・・・・・
・・・・
・・
そして…
「ふふっ。まさかコレが届いた日に、こんなことになるとはね♪」
ベッドの片隅に置いてある、今日届いたばかりの荷物から取り出した2つのぬいぐるみを眺めて微笑む、香織理であった…。
あとがき
というわけで、香織理さん聖誕祭SSです。いかがでしたでしょうか?おとボク初心者Aです。
史&ケイリ聖誕祭SSを書いてしまったから、香織理さんも書かないわけにはイカンよな~と思いつつ、ネタが無いわケイリさんの聖誕祭から日数がないわで、キー!(/>д<)/┷━┷ となっていた中で、書いてみました。
なんか、いい話っぽいけど、中身はカオスだなぁ…^^;
ちなみに小物屋や小父さんは、『耳をすませば』のイメージで、スイカのぬいぐるみとバロンをフュージョンしちゃいました(笑)
あいかわらずめちゃくちゃな文ですが、楽しんでもらえたらうれしいです。以上、おとボク初心者Aでした。